エンジンはCOVENTRY CLIMAX製FWEオールアルミエンジンで、現在ではまったく見られなくなったツインSU キャブレターを装備しています。各キャブレターが2気筒を担当。ジェットを通過した混合気は、集合チャンバ管を経て各気筒に配分されます。始動のためのチョーク機構(ニードル機構全体を下に引き下げてジェットの吐出面積を大きくする)は、前側キャブにしか付いていません。この、漏れの恐れのある機構の真下が、排気マニフォールドです!。吸気系にはブレーキサーボ用のバキューム取り出し口が用意されておらず、従って4輪ディスクサーボ無しです(ブレーキの効きが悪いのには、本当に困ります)。
写真左側中央付近の黒い円筒は、サーモスタットで、メルセデスベンツの部品を流用しています。暖気中は、冷却水の流れを下向きに分岐・循環させます。


この車のエンジン周りのボルトナット、クランプ、ブーツなどは航空機用の部品を使用しています。これは、航空機なみの激しい震動からねじの緩みや脱落を防ぐため(輸入時のELITEは、ネジというネジすべて緩んでいたほど!)。ピッチが合わない部分は、やむを得ずオリジナルのねじとロッキングエージェントで対応しています。ナット類にはナイロンを使ったセルフロックナットが多用されていましたが、複数回の使用や、高熱部には適しません

Restoration of the '61 Lotus ELITE #1121441 1441

REVISION 
0902追記
0904改訂・追記
0905改訂・追記

0912REV.1002REV.
111115.REV. 1205

1981頃 塗装色変更計画(3D CG)           1985(自分で)塗装後イエローYellow

シルバーのボディに黒(グロス)ルーフ=Elite発表時の姿 となる予定でしたが未実施

.1.給油口はキーつき、露出型(クロームめっき)キャップ式です。フィラーキャップは、タンクと硬いゴム管のネックで接続されており、直接薄い外板にマウントされているため振動の逃げ場がなく、キャップ周りの外板にはストレスクラックが発生しています。
タンク容量は25リッターと少ないので、航続距離はせいぜい200km。ルマンを走るには大型タンクとクイックフィラーが必要です。
2.ドア三角窓についた斜め棒状のものは、三角窓を開けたときにガラスについた雫が、室内側に落ちないようにするためのドリップレールです。ドア窓はアクリル製で前後方向にカーブしています。ガラスのタンブル角も、ドア内に収納できるようにデザインされていますが、残念ながら、昇降機構は搭載されていません。代わりに、細いクロム枠のついたガラスごと取り外すようになっています。

ブレーキは、当時まだ少なかった4輪ディスク、フロントがGIRLINGの対向ピストン型キャリパー(鋳鉄)、リアはパーキングブレーキ機構つきインボードディスク(キャリパーはアルミアロイ)。
フロントのアッパーアーム、ナックル、ステアリングギアボックス、デフケース(前側)など、他社の部品を一部流用、自前のアーム類などと組み合わせています。

右に見えるA型アームは、リアのトレ―リングアームで、球状の端末に球状のゴムブッシュを被せ、お椀で半球がへこんだFRP床に直接とめると言う恐ろしい設計です。各部のラバーブッシュの容量は、現代の車から見ると、著しく小さいうえ、材質も悪いので、殆どがストレスクラックを生じています。

ELITEのインスツルメントパネルは、シンプルな構成ながら情報は必要にして十分、視認性も優秀です。計器は左から電流、タコ、油圧/水温、速度、燃料。この車の装備品はほとんどがオリジナルですが、右の燃料ゲージの横にアイボールタイプの外気エアアウトレットをとりつけてあります。ウインドシールドの直前にあるインダクションボックスから、1.5”のホースで分岐十分な風量が得られます。

ELITEのエンジンは、英国Coventry Climax製FWEと呼ばれるオールアルミ製。元は消防ポンプのエンジン として開発されたといわれています。
SOHC形式で、カムはジャックシャフトを経由してチェーンで駆動されます。右側吸気・排気レイアウト、クランクは3ベアリング、バルブ構成もシンプルで、メインテナンスも容易ですが、その分オイル消費量と振動が多いエンジンです。

カムカバーの上部にはGODIVAのメダリオンと、ポケットがあり、バルブクリアランス調整用のスペアシムが収納されています。バルブのステムシールは装着されていません。水ポンプ(図の大径プーリ)のボディは、薄肉のアルミ鋳物で、剛性が不足しているらしく、ベルトを張り過ぎると軸心が変形するようです。オイルパンは、立派なアルミ鋳物製のフィン付き。ギヤ式のオイルポンプ、フローティングストレーナが内蔵されています。
ギアボックスのマウンティングプレートは、5mmの平らな鉄板で、ただでさえ振動の多そうなBMCのギアボックスとの組み合わせ方としては、あまりよくないでしょう!

このエンジンは、確か、ヒルマンIMPにも載っていたような・・・。

外観上の特徴



■ELITEの構成−サスペンションとボディ構造 -Suspension and Body structure



(英国、LOTUS社、1957年デビュー、Type14)は、ルマン24時間耐久レースに何度もクラス優勝した高性能と、その優美なスタイルで今でもファンが多いフルFRPのスポーツカーです。50年経った現在でも、世界各地で400台以上の生存が判明しています。この稿は、30年前に入手して以来、なかなか達成できないレストアをテーマにしつつ、この記事がさらなる促進剤になってレストアが進んで欲しいと願う側面も持っています。
航空機のエンジンや機体などのレストア記事(LINK〜)と織り交ぜた迷走的エッセイになってしまっていますが、実際的メリットなぞ殆ど考えない、マニア向けのページ・・・なら大目に見ていただけるか? といったところです。


今、1階のガレージに住んでいるELITEは、シャシNO.1121441で、Series2の初期仕様をもっています。
この車は1978年ごろイタリアから大阪に輸入されたもので、CG誌の小さな広告を見て即、今市の薄井さんと徹夜で大阪へ走ったのが縁の始まりでした。その後、航空機会社のサラリーマンの傍ら、夜は某M自動車会社のカタログ絵師となって費用を稼ぎながら、細々と個人的レストアを続け、第1段階は何とか完成させました。ミラノにルーツを尋ねたこともあったり、ELITEとこんな長く深い付き合いになろうとは、夢にも思いませんでした・・・。

▼シートは小型幅狭で、肩甲骨のあたりが圧迫されますが、我慢できないほどではありません。クッションにはゴムベルトが使われています。

▼#1441には航空機部品を使っています(個人の趣味で)。スクリュー、AN3ボルト、ナット、AN960ワッシャ、MS21919クランプやブーツ、ホース類などもMS/AN規格品です。

 
 1961 LOTUS出荷時の塗装色は白-White

 1979
イタリア
(ミラノ)
輸出時は黒-Black

右上の赤白PLACは BRISTOL AIRCRAFT社 のもので、FRPボディの製造元表示。その下側の真鍮板は、車体番号の刻印プレートで、ワイヤーでかしめられています。黒いプレートは、LOTUS CARSの潤滑油互換表。
左は、ノンオリジナルの、ULTRAセミトランジスタ、+アース用点火装置,、その後ろの銅編素線はフードのボンディンぐジャンパーです。
エンジンベイとフードのFRP面は非電導性のため、コンダクティブコーティングで、電気的導通状態にして電磁ノイズが表にでないようにしようとするものです。
#1441にはラジオが装備されていないので、その効果は証明できていません!




ブーツ(トランク)の中は、スペアタイア(のでっぱり)と燃料タンク、バッテリー(左)が配置されます。容積はかなりあり、旅行用バッグの2つ3つは入ります。現状ではむしり取られていますが、壁面全面にフェルト状の防音材が接着されています。SARK製燃料タンクの右側はフィラーネック。この車は、燃料ポンプをエンジン横の機械駆動式から、電動プランジャタイプに交換し、インラインのフュエルストレーナーも追加装備しています(写真は仮付け状態)。

▼ペダルは小型で間隔も狭く、大型の靴では操作しづらい。配置はヒールアンドトウがし易いよう、ブレーキペダルが上側にずらされています。

 1
ELITE#1441は、イタリアから輸入されて時は黒でした。その後のレストアの段階で塗装を剥離したところ、オリジナルの塗色は白(グレーのプライマ)で塗装されていたことが判明、その上に黒がかなり厚塗りされていました。
その後のレストアで、塗料をポリウレタン(DUPONT)のペールイエロー塗装として、25年間を過ごしました。
数年前、オーナーの銀髪?に合わせ、昔風のシルバーメタリックに衣替えしました。ルーフ部はこれまた古風な黒と、2トーンにする予定でしたが、いまだに実現していません。

塗料は当時航空機用に使われ始めていたDUPONT のCENTARIを用意し、SOLIDのこともあって自分で塗装しました。この塗料は肉やせがなく、25年間光沢を保ちました。

二玄社
CG誌撮影

ELITEのFRPそのままのインテリアは、現在のデザインから見ると大変かわっています。外板の内側を仕上げたようにも見えますが、板厚分オフセットされた内板シェルが別体で成形され、接着されています。
■20年前 近くの奥多摩周遊道路で。山間部でも現代の一般道は規制が多く、スポーツ走行は出来ません。普通の道路を普通に走るのは、ELITEとドライバーにとって、もっとも不得手な(=つまらない?)、と感じます。
サスペンションは柔らかく、スポーツカーといってもMGなどの硬派と比べると、 ずっと乗りやすくなっていますが。 


走行は20年間で僅かに1000マイルほどです。22年2月現在で、やっと1800マイルに到達。振動や騒音、ブレーキの効きの悪さなどから目的地のある走行は極力控え、2週間に1回程度、20km程の軽い走りにとどめています。

▼サスペンションの構成は、写真のようなシンプルなものです。フロントはダブルウイッシュボーン(アッパーアームの一部をスタビライザが兼用)、リアはチャップマンストラットと呼ばれるストラットタイプで、ロアAアームと、ドライブシャフトのアッパーアーム、長いストラットで構成されます。

この1441には、電装各系統に航空機用のスイッチブレーカーを挿入し、ヒューズを排しています。停車時に全ブレーカーをOFFにすると、各回路が完全に遮断され、リーク電流の心配がなくなりますが、始動時には全SWをONにする、航空機並みの手順が必要です。

■ELITE#1441の履歴 (日本に来て30年)・・・・数字だけがどんどん増えて・・・
History of ELITE #1441 about 30 years coming from Italy

▲三角窓はベンチレータとして大変有効




5.バンパーは前後ともステンレス製(上下2つわり溶接構造)で、リアは一体型、フロントは左右分割型です。実際的な衝撃緩和能力はまったく無いと思われます。
マフラーは、#1441では、大型バイク、カワサキW1のキャブトン型を流用しています。

3.サイドシル前側下に出っぱった部分は、ジャッキパッドです。全FRPボディにはエンジン下、ドアポスト、フロントガラス周りだけに、僅かに金属フレームが入っていますが、その一端をジャッキ用にしています。

4.ワイヤースポークホイールは、現代の車には全く見当たりません。
軽量なことと、ディスクホイールにはない美観を備えています。
リムは単純な断面なので、衝撃で変形し易いことが欠点です。センターロックは現代のレーシングカーにも使われている、迅速なホイール取り外し式デバイスです。ロックナットの角を、銅のハンマーで叩いて取外します。

カーペットは、ノンオリジナルの安手の赤い二ードルパンチで作り直されて作されています。元のカーペットは、メディアムグレイのループカーペットです。

ウインドシールドの直前にあるエアスクープは、ウインドシールド前の正圧をよく取り入れます。#1441では、このボックスから1.5”のホースで分岐したラムエアを室内に導きます。

▼リアサスペンションは、ストラットタイプ(チャップマンストラット)で、ダンパーユニットの上部取り付け部が室内に突出しています。このような応力集中部にも金属インサートのないFRP製です(マウント部は約12mm厚)。

▼#1441では電装の各系統にサーキットブレーカーを挿入し、過電流時の自動シャットと漏電防止、盗難防止に役立てています。シェルフの下は、ヒーターのスイッチ。

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 2

・ENGINE: Coventry Climax FWE ・1216cc ・76.2x66.6mm ・SOHC ・83hp・6500rpm ・10.4kgm/5000rpm ・TWIN S.U. H-4
 Dry Weight 95kg  ・ OIL: SAE #20/30 4.6L
・全長3734mm ・全幅1486mm ・全高1194mm ・W/B2242mm・トレッドF/R 1,194/1,226mm  ・重量585kg(w/o Fuel)
 ・乗員2名 ・燃料タンク30L・GEAR BOX: BMC−B 4 speed ・Final 4.22  ・TIRE:155x15 

 

■ELITEのパワープラント--Power Plant --Coventry Climax FWE

W1Sのキャブトン型マフラーは、恰好・排気音ともまずは合格点。難点は、重量とマウント方法で、うすいFRPのリアフロアアンダーパネルにわずかのゴムを介して吊下げられていることで、ねじ部にマフラー重量と振動によるストレスが集中してクラックを生じ易いことです。

冬のELITE---ここは冬の小淵沢です。#1441はここまで走って行けない(高速道路を走るのはまったくつまらない!)ので---行けたらいいなという願望の合成写真です。

#1441は4回も衣替えしています。生まれて50年も経っているので、いろいろな見栄えを持たせてやるのも親心?というものです。ボディの塗り替えが自分でも簡単にできると言うのも理由の一つです。ここでは色調を検討するために3DCGを制作し、色々な背景で色を検討しています。仮想の旅行感と、レストア実作業とも、また違った楽しさが得られて楽しいものです。

ELITEのボディはごくわずかの金属補強(エンジンとFサスペンション取付け部、ウインドシールド周りにのみスチールインサートがあります)を付加したFRPモノコック構造。FRPはガラスポリエステル(殆どがマット)で3mmから12mmまでの厚さの様々なパーツ形状にレイアップされ、接着結合で一つのシェルを作っています。サスペンションアームなどの取付けボルト部分には、金属ボビンがFRPに直接インサートされていますが、締めすぎてルーズになったり、錆やストレスクラックで緩んだり、不具合が多い部分ではあります。

30年の間、エンジンルームのビューはなんら変わっていません。この20年間は、殆んど走らなかったので、壊れず・汚れず・メンテせずでした。わずかに点火装置(セミトラ)が追加されているだけです。クランクシャフト後端あたりからオイルの微滴が床を汚すことは、今も変わっていません・・・。            

30年前 京都時代の第1次レストア後は元気に走りました。矢田部では気流糸を貼って車体周りの流れを見ました(CGのビデオ撮影時)。この時は、せいぜい120Km/hまででしたが、ルマンのストレートを200Km/h近くで走ったドライバーの肝っ玉の大きさを想像して、驚嘆するばかりでした! 空力特性はその後、実車風洞で計測したところ、Cd値は0.317と優秀でした。ワイヤホイールとトランク後端を改修すれば、更に良くなると感じられました。

■現在 平成21年。ELITEが生まれて50年、手元に来てから30年が経ちました。約12年!!かかって第1次レストアを行い,その後東京に移ってからの走行距離はわずかに1400mile(2240Km)といった引きこもりタイプに育ってしまいました。最近、再車検を取り、自由に乗り回せる状況にはなりましたが、なかなか遠方まで走ろうという恐れ知らずの元気が出ません。

▲ドアガラスは外してシート後ろのポケットに。

▲テールランプレンズは、まわすと簡単に取り外せる(脱落しやすい)

森田 忠画「LOTUS ELITE」二玄社刊より
■現在の住みか。
1Fのガレージに、同じ人間が乗るとは思えない、親子ほど歳とサイズの違うシトロエンC5 と並んでいます。ELITEのほのぼのとした顔つきに比べ、C5はなんというアクの強さでしょう!!  乗っている人の多面性が想像されてしまう恐ろしいショットです。

塗装色を検討するために、ALIASで3Dモデルを制作したので、ついでにテクニカルイラストにはどうか、と案を制作してみました。
3Dデータなので、自由な配置やビューをとることができ、視覚的効果も高く、かつ制作も楽しいものです。
「LOTUS ELITE」を出版する時点で3DCGが使えたら、躊躇なく使っていました・・(昔のイラストはロットリングペンで手描きでした!)。

2003? シルバーメタリックに再塗装。塗料はDUPONT。7年経過した時点では、肉やせでファイバー目が見えてきています。
Metalic Silver

Linkページに戻ります。111115W2Design


2010以降は
何色に?

シングルレース、48スポークのDUNLOPワイヤーホイール。タイヤはミシュランZXZの155x15と、現代標準からすれば細いものですが、普通に乗るのであれば、更に細くて軽い135x15でもよいと思います。

森田 忠画[Lotus ELITE]より 

 追記
T.MORITA 080415

■LOTUS ELITE 080225

塗装色の変遷など--- Exterior Painting

080320追加